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「プライバシー」とは?

「プライバシー」とは、私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利のことをいいます(東京地判昭和39年9月28日判時385号12頁〔宴のあと事件〕)。

プライバシー侵害は、次の場合に成立するとされています。

裁判例の紹介

アバターに関してプライバシー侵害が問題となりやすいのは、その操作者が誰であるかなどの情報を暴露するケースです。

以下、裁判例が多く出始めているVTuberに関する裁判例をいくつか紹介します。

東京地判令和2年12月22日(令和1年(ワ)第18748号)

インターネット上の電子掲示板でVTuberの「中の人」の本名及び年齢を明らかにする内容の投稿をしたことにつき、「本名や年齢は個人を特定するための基本的な情報であるところ、インターネット上で本名や年齢をあえて公開せずにハンドルネーム等を用いて活動する者にとって、これらの情報は一般に公開を望まない私生活上の事柄であると解することができる」と述べてプライバシー侵害を認めた事例。

東京地判令和3年6月8日(令和3年(ワ)第3937号)

所属事務所のファンスレッドにおいて、それが特定のVTuberを演じる者であると理解される形で原告の顔写真を公開したことにつき、プライバシー侵害を認めた事例。

裁判所は、「そもそも着ぐるみや仮面・覆面を用いて実際の顔を晒すことなく芸能活動をする者もいるところ、これと似通った活動を行うVチューバーにおいても、そのVチューバーとしてのキャラクターのイメージを守るために実際の顔や個人情報を晒さないという芸能戦略はあり得るところであるから、原告にとって、本件画像が一般人に対し公開を欲しないであろう事柄であったことは十分に首肯できる」うえ、原告がそのVTuberであることを積極的に公開しておらず、所属事務所との間でも一個人として生身で活動を行うことが禁じられていたことから、「原告は本件画像の公開を欲していなかったことが認められる」とした。また、この画像は過去に原告自身がSNSで公開したものであり、また、すでに別人によってそのVTuberを指すものとしてインターネット上で公開されていたのであるが、それでもその画像とVTuberとの同一性を示すものとして新たに公開・拡散されることを原告が望んでいないことは明らかであると述べ、プライバシー侵害を認めた。

まとめ

このように、いわゆる「顔バレ」、「身バレ」のように、VTuberなど匿名で活動する人物とそのキャラクター等との同一性を暴き、公開・拡散することはプライバシー侵害となり、損害賠償請求等の対象となることがあります。

メタバースにおいて匿名で活動する他のユーザの正体を暴き、公開・拡散することも、同様にプライバシー侵害の問題となるおそれがあるため、安易な行動に出ないよう注意しなければなりません。

特に、「中の人」とキャラクターとの同一性がある程度公に知り得る状態になっていたとしても、それを新たに公開・拡散することがプライバシー侵害になり得るとされている点には要注意でしょう。「みんな知っているだろう」と思って拡散すると大変なことになりかねない、ということです。

VTuberの立場からは、所属事務所との契約等を含めて、自分自身とキャラクターとの同一性をきちんと秘密として管理するべきことを普段から徹底しておくことにより、万一の場合にプライバシー侵害が認められやすくなり得るという点を知っておくとよいでしょう。

この記事の著者について
日本国弁護士・ニューヨーク州弁護士
日本バーチャルリアリティ学会認定上級VR技術者

関 真也 Masaya Seki

エンタテインメント分野、ファッション分野、先端テクノロジー分野の知財法務に力を入れている弁護士です。漫画・アニメ・映画・ゲーム・音楽・キャラクターなどのコンテンツビジネス、タレント・YouTuber・インフルエンサーなどの芸能関係やアパレル企業・デザイナー・流通・モデルなどのファッション関係に加え、最近はXR(VR/AR/MR)、メタバース、VTuber、人工知能(AI)、NFT、eSports、デジタルファッションなどに力を入れ、各種法律業務に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。経済産業省「Web3.0 時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る研究会」委員、経済産業省・ファッション未来研究会「ファッションローWG」委員など官公庁の役職を務めルールメイキングに関わるほか、XRコンソーシアム監事、日本商標協会理事、日本知財学会コンテンツ・マネジメント分科会幹事、ファッションビジネス学会ファッションロー研究部会⻑などを務めており、これらの活動を通じ、これら業界の法制度や倫理的課題の解決に向けた研究・教育・政策提言も行っており、これら専門性の高い分野における法整備や業界動向などの最新情報に基づいた法的アドバイスを提供できることが強みです。

主な著書 「ビジネスのためのメタバース入門〜メタバース・リアル・オンラインの選択と法実務」(共編著、商事法務、2023年)、「XR・メタバースの知財法務」(中央経済社、2022年)、「ファッションロー」(勁草書房、2017年)など

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