研究・情報発信

はじめに

オフラインのeスポーツ大会は、その運営者が大会指定のパソコン、ゲーム機、スマートフォン等の機材を会場で管理し、参加者に貸与することが一般的です。

そのため、eスポーツ大会は、ゲームセンター等を規制する風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」)第2条第1項第5号の「風俗営業」に該当し、同法の規制を受けるのではないかという問題があります。

eスポーツ大会が風営法の適用を受ける場合、大会開催者は、開催地を管轄する都道府県公安委員会の許可を得なければならず(風営法第3条)、大会運営に支障が生じる可能性があります。

今回は、eスポーツ大会が風営法の適用を受けるのかについて解説します。

【一覧:関真也法律事務所のeスポーツ法務解説】
#1:eスポーツ大会と賭博について
#2:eスポーツ大会の賞金等は景品表示法上の「景品類」に該当するか


関係法令等

風営法第2条第1項第5号は、「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(略)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業」を、「風俗営業」の一種として定めています。

同号の「テレビゲーム機」は、風営法施行規則第3条第2号で、「勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字、文字その他の記号によりブラウン管、液晶等の表示装置上に表示される機能を有するものに限るものとし、射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。」と定義されています。

また、同号の「店舗」とは、「社会通念上一つの営業の単位と言い得る程度に外形的に独立した施設」と解釈され、「看板等の表示、従業者の服装、又は営業時間の独立性等その実態から判断して、一つの営業単位としての独立的性格を有する」施設がこれに当たるとされています[1]

さらに、同号の「その他これに類する区画された施設」とは、「いわゆるゲームコーナーのように「店舗」に当たらない区画された施設で、営業行為の行われるものをいい、例えば、旅館、ホテル、ショッピングセンター等の大規模な施設の内部にある区画された施設」がこれに当たるとされています[2]


 eスポーツ大会の「風俗営業」該当性

eスポーツ大会は、PC、ゲーム機、スマートフォン等を使って、特定のゲームタイトルで参加者の勝敗を競うため、「テレビゲーム機」の要件を満たすと考えられます。

また、eスポーツ大会(特にオフライン大会)は、会場の規模によりますが、大会会場として外形的に認識できるような仕様にするのが一般的であるため、「店舗その他これに類する区画された施設」の要件を満たすと考えられます。

そのため、オフラインで開催されるeスポーツ大会は、テレビゲーム機を備える店舗その他これに類する区画された施設において当該テレビゲーム機により客に遊戯をさせる営業として、風営法第2条第1項第5号の「風俗営業」に該当し、風営法の適用を受ける可能性があると考えられます。


 風営法の適用を受けないための方策

eスポーツ大会が風営法の適用を受けないようにする方策も検討されてきました。現在では、以下のような方策が考えられています。

「テレビゲーム機」に関する要件との関係では、「通信可能なパソコン、スマートフォン、タブレット等の汎用性のある機器は、当該機器がゲーム以外の機能を現実に利用可能な状態で提供されている限り、風営適正化法で定める遊技設備には該当しないことから、このような提供形態でこれらの機器のみを用いて開催される競技大会は、参加料の徴収の有無にかかわらずゲームセンター等営業には該当しない」との見解が提唱されています[3]

「店舗その他これに類する区画された施設」に関する要件との関係では、「野外の仮設会場等、常設でない場所で大会を開催した場合はこの要件を満たさず、風営法の規制から外れる。」との見解が提唱されています。もっとも、②の見解については、「野外の仮設会場で大会を開催しても、大会が2日以上にわたるとその場所が常設と見なされる可能性があ」るとの見解がありますので、注意が必要です[4]


大会参加費の設定において注意すべき点

eスポーツ大会の中には、会場やスタッフの人件費に充てるために、「参加費の支払い」を求める大会があります。

風営法第2条第1項第5号を規定した趣旨は、「ゲーム機賭博事犯や少年非行の温床となるおそれのあるゲームセンター等を風俗営業とすることにより、その健全化と業務の適正化を図ること」と解釈されています[5]。風営法第2条第1項第5号の解釈運用は、解釈を留保している部分があり、その際には「当面、賭博、少年のたまり場等の問題が生じないかどうかを見守ることとし、規制の対象としない扱いとする。」と方針を示している部分があります[6]。これらの解釈及び方針からすると、風営法第2条第1項第5号は「賭博」についてもこれを防止する視点を有しているものと考えることができます。

eスポーツ大会が「賭博」に該当する可能性が場合とは、「参加費の支払いあり+賞金の提供ありの大会」の場合となります。当該大会において、「賭博」に該当するリスクを低減させる方策として、「大会参加者から徴収される参加費がもっぱら大会の運営経費に充当され、賞金は大会主催者以外のスポンサーから直接提供される場合、参加者が失った参加費が賞金として移転するわけではないので、賭博罪は成立しない」とする見解があることは、すでに紹介したところです(下記関連記事参照)。

【関連記事】関真也法律事務所のeスポーツ法務解説#1:eスポーツ大会と賭博について – 関真也法律事務所

これらを踏まえ、参加費の金額設定については、「賭博」(賞金等)の問題と併せて、大会の運営経費を基準に検討するという考え方が提唱されています[7]

令和4217日第208回国会予算委員会第七分科会第2号で、警察庁の政府参考人は、当該考え方の趣旨を踏まえたと考えられる言及をしています。当該政府参考人は、eスポーツ大会が風適法の規制を受ける遊技をさせる営業に該当するか、との質問に対して、「この大会の主催者が、例えばですが、大会参加者から徴収する参加料の合計額、これが大会設営費用を上回らないようにするなどの条件を満たす場合におきましては、これは風営適正化法上のゲームセンター等営業には該当しないという整理が可能であると考えております。」(注:傍線は筆者が加筆)と答弁しました[8]

当該参加費の考え方については、一般社団法人日本eスポーツ連合においても「参加料の合計額(最大参加者数×1人あたりの参加料)が、大会設営費用見込額の合計を上回らない」ことと示しています[9]


おわりに

今回はeスポーツ大会が風営法の規制対象となるかについてご紹介しました。

関真也法律事務所では、eスポーツのチーム、スポンサー、主催者、ゲーム会社、広告代理店、オンラインプラットフォームなどから、賭博罪、景品表示法、下請法・フリーランス法、労働法その他の各種法令への対応、契約書対応、コンプライアンス対応、知的財産その他の権利処理など多岐にわたる法律相談のほか、社内セミナー講師など幅広い業務をお受けしています。

eスポーツの法律問題に関するご相談は、当ウェブサイトのフォームよりお問い合わせ下さい

関真也法律事務所
弁護士 関  真也
弁護士 砂川 祐基


[1] 令和7530日警察庁丙保発第7号、丙人少発第17号警察庁生活安全局長通達別添「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準」6頁(https://www.pref.kyoto.jp/fukei/site/seiki_f/fuzoku/documents/0101kijun.pdf, 2025年730日最終閲覧)。

[2] 同上7頁。

[3] 一般社団法人日本eスポーツ連合「参加料徴収型大会ガイドライン」1頁(https://jesu.or.jp/wp-content/themes/jesu/contents/pdf/terms/participationfee_guidelines.pdf?20220419, 2025年730日最終閲覧)。

[4]21回弁護士業務改革シンポジウム【第4分科会】「eスポーツの現状と法的課題」98-99頁(201997日)(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/symposium/gyoukaku_sympo/21th_keynote_report_4_tr.pdf, 2025年730日最終閲覧)。

[5] 前掲注14頁。

[6] 前掲注14-6頁参照。

[7] 一般社団法人日本eスポーツ連合・前掲注31頁参照。

[8] 西村 康稔ほか「第208回国会予算委員会第七分科会第2号」〔住友一仁発言〕(令和4217日)(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/003720820220217002.htm#p_honbun, 2025年731日最終閲覧)。

[9] 一般社団法人日本eスポーツ連合・前掲注32頁。

この記事の著者について
日本国弁護士・ニューヨーク州弁護士
日本バーチャルリアリティ学会認定上級VR技術者

関 真也 Masaya Seki

エンタテインメント分野、ファッション分野、先端テクノロジー分野の知財法務に力を入れている弁護士です。漫画・アニメ・映画・ゲーム・音楽・キャラクターなどのコンテンツビジネス、タレント・YouTuber・インフルエンサーなどの芸能関係やアパレル企業・デザイナー・流通・モデルなどのファッション関係に加え、最近はXR(VR/AR/MR)、メタバース、VTuber、人工知能(AI)、NFT、eSports、デジタルファッションなどに力を入れ、各種法律業務に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。経済産業省「Web3.0 時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る研究会」委員、経済産業省・ファッション未来研究会「ファッションローWG」委員など官公庁の役職を務めルールメイキングに関わるほか、XRコンソーシアム監事、日本商標協会理事、日本知財学会コンテンツ・マネジメント分科会幹事、ファッションビジネス学会ファッションロー研究部会⻑などを務めており、これらの活動を通じ、これら業界の法制度や倫理的課題の解決に向けた研究・教育・政策提言も行っており、これら専門性の高い分野における法整備や業界動向などの最新情報に基づいた法的アドバイスを提供できることが強みです。

主な著書 「ビジネスのためのメタバース入門〜メタバース・リアル・オンラインの選択と法実務」(共編著、商事法務、2023年)、「XR・メタバースの知財法務」(中央経済社、2022年)、「ファッションロー」(勁草書房、2017年)など

使用言語 日本語・英語