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はじめに

eスポーツ大会は、日本でも数多く開催され、中には国際大会として開催されるものもあります。日本でeスポーツの国際大会が開催されると、海外プレイヤーが来日することが予想されますが、日本に在留するための資格(以下「在留資格」)について法的問題が生じます。

今回は、海外プレイヤーの在留資格と出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の関係について解説します。

【一覧:関真也法律事務所のeスポーツ法務解説】
#1:eスポーツ大会と賭博について
#2:eスポーツ大会の賞金等は景品表示法上の「景品類」に該当するか
#3:eスポーツ大会は風営法の規制を受けるか
#4:プロeスポーツ選手の労働者性と法的問題点~未成年者がプロ選手になるケースを例に~
#5:eスポーツ選手の移籍制限と独占禁止法の考え方
#6:チート行為と刑法犯罪について


関係法令

入管法第2条の21項は、「本邦に在留する外国人は、・・・当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格・・・又はそれらの変更に係る在留資格をもつて在留するものとする。」と規定しています。

「上陸許可」とは、日本に上陸しようとする外国人に対して、上陸のための要件を満たしている場合、入国審査官が旅券上に証印をすることで与えられるものです[1]

「在留資格」とは、「外国人が日本で行うことができる活動等を類型化したもので、法務省(出入国在留管理庁)が外国人に対する上陸審査・許可の際に付与する資格」をいいます[2]

在留資格は入管法別表第一及び第二に列挙されており、以下のように分類することができます。また、在留資格は、その資格に応じて活動内容を限定しています(入管法第2条の22項、別表第一及び第二)[3]

別表第一 別表第二
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転職、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

なお、これらに類するものとして「査証」(ビザ)があります。これは、「日本に入国しようとする外国人が所持する旅券(パスポート)が真正であり、かつ日本への入国に有効であることを外務省・在外公館が確認するもので、それぞれ定められた条件の下で、当該の外国人の本邦への入国(滞在)が適当であることについての「推薦」という性質を持」ち、「上陸審査を通過すればその役割も終わ」るとされています[4]

このように、「在留資格」と「査証」(ビザ)は別個のものですが、「一般的に「ビザ」と言う場合、査収ではなく在留資格のことを指している場合もあ」るため注意が必要です[5] [6]


海外プレイヤーが日本の大会に出場する場合の在留資格について

海外プレイヤーが日本の大会に出場する際の在留資格については、賞金付き大会の場合と賞金の出ないアマチュア大会の場合に分けて考える必要があります。

賞金付き大会の場合

この場合、海外プレイヤーが取得すべき在留資格は「興行」であると考えられます。

「留学」の在留資格や「ワーキング・ホリデー制度」を活用することもかつて検討されたようですが、活動目的が「留学」でないため不法滞在になる可能性があります。また、ワーキング・ホリデーは在留資格のうちの「特定活動」に該当し、「相手国・地域の青少年に対し、休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度」ですが[7] [8]、海外プレイヤーは「旅行・滞在資金を補うため」に大会に出場するわけではない場合が多いと思われます。

2016年330日、法務省が「日本で賞金付きオンラインゲームのイベントに出場して生計を立てるプレーヤーに、興行ビザを発行する方針を固めた」との報道がされました[9]

法務省が認めた在留資格は、「興行」(「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令」記載の「法別表第12の表の興行の項の下欄に掲げる活動」第3号「申請人が演劇等の興行に係る活動以外の興行に係る活動に従事しようとする場合は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて従事すること。」[10])とされています[11]

在留資格「興行」の当該第3号(現在の第2号)は、いわゆる「プロアスリートビザ」と呼ばれているものであり、一般的な外国人プロスポーツ選手が日本に滞在する際に取得するものと考えられています。法務省の方針は、eスポーツがスポーツであると認知したことの表れであるといえるでしょう。

賞金の出ないアマチュア大会の場合

この場合、賞金が出ないことから、在留資格は「短期滞在」になると考えられます。

なお、「短期滞在」では、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を得る活動を行うことは認められ」ていません[12]。したがって、賞金が出なくとも、eスポーツチーム、スポンサー等と海外プレイヤー間で報酬を含む金銭が授受されないよう注意する必要があります。


おわりに

eスポーツ大会の主催者と海外プレイヤーが所属するeスポーツチームは、海外プレイヤーの在留目的と活動内容について注意する必要があります。

関真也法律事務所では、海外プレイヤーの日本のeスポーツ大会へ参加させるための手続きや入管法に関する問題についてご相談をお受けしているほか、eスポーツのチーム・運営企業、スポンサー、eスポーツ大会主催者、ゲーム会社、広告代理店、オンラインプラットフォーム等から、賭博罪、景品表示法、風営法、独禁法その他の各種法令への対応、契約書対応、大会運営規約対応、コンプライアンス対応、知的財産その他の権利処理など多岐にわたる法律相談や社内セミナー講師など幅広い業務をお受けしています。

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関真也法律事務所
弁護士 関  真也
弁護士 砂川 祐基


[1] 外務省ウェブサイト「ビザ・上陸許可について201951日( 2025927日最終閲覧)。

[2] 外務省ウェブサイト「制度の概要」(2025927日最終閲覧)。

[3] 出入国在留管理庁ウェブサイト「在留資格一覧表」(2025927日最終閲覧)参照。

[4] 外務省・前掲注2)。

[5] 外務省・前掲注2)。

[6] 外務省ウェブサイト「査収(ビザ)202591日(2025927日最終閲覧)。

[7] 出入国在留管理庁ウェブサイト「在留資格「特定活動」」(2025927日最終閲覧)。

[8] 外務省ウェブサイト「ワーキング・ホリデー制度」2025年1月1日(2025927日最終閲覧)。

[9] 日本経済新聞「法務省、「プロゲーマー」にビザ発行の方針2016330日(2025927日最終閲覧)。なお、当該記事における「ビザ」は在留資格を指します。

[10] なお、「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令」が令和581日改正されたことに伴い、当該第3号は、現在は第2号となっています。

[11] 株式会社DetonatioN【ご報告】DFM所属韓国人選手への興行ビザ基準省令3号の発行について2016330日(2025年910日最終閲覧)参照。

[12] 外務省・前掲注6)参照。

 

この記事の著者について
日本国弁護士・ニューヨーク州弁護士
日本バーチャルリアリティ学会認定上級VR技術者

関 真也 Masaya Seki

エンタテインメント分野、ファッション分野、先端テクノロジー分野の知財法務に力を入れている弁護士です。漫画・アニメ・映画・ゲーム・音楽・キャラクターなどのコンテンツビジネス、タレント・YouTuber・インフルエンサーなどの芸能関係やアパレル企業・デザイナー・流通・モデルなどのファッション関係に加え、最近はXR(VR/AR/MR)、メタバース、VTuber、人工知能(AI)、NFT、eSports、デジタルファッションなどに力を入れ、各種法律業務に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。経済産業省「Web3.0 時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る研究会」委員、経済産業省・ファッション未来研究会「ファッションローWG」委員など官公庁の役職を務めルールメイキングに関わるほか、XRコンソーシアム監事、日本商標協会理事、日本知財学会コンテンツ・マネジメント分科会幹事、ファッションビジネス学会ファッションロー研究部会⻑などを務めており、これらの活動を通じ、これら業界の法制度や倫理的課題の解決に向けた研究・教育・政策提言も行っており、これら専門性の高い分野における法整備や業界動向などの最新情報に基づいた法的アドバイスを提供できることが強みです。

主な著書 「ビジネスのためのメタバース入門〜メタバース・リアル・オンラインの選択と法実務」(共編著、商事法務、2023年)、「XR・メタバースの知財法務」(中央経済社、2022年)、「ファッションロー」(勁草書房、2017年)など

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